「GREEN WOOD WORK」ワークショップは、村民の方から『自然溢れる西粟倉村にいるものの、木工体験できる機会がない』という声をお聞きし、企画したのが始まりです。
『モノづくりの魅力をより多くの方とシェアする良い機会』ということで、木工ワークショップ「GREEN WOOD WORK」を開催するに至りました。
そもそもグリーンウッドワーク(ワーキング)とは?
ワークショップのタイトルにあるグリーンウッドワークとは、「伐採されて間もない生木を、大型の機械を使わずに切ったり削ったりして小物や家具を作るモノづくり」のことをいいます。
- サクラやクリ、ヒノキなど山や庭の手入れで伐った木を使える
- 生木をそのまま使うため、乾燥のためのコストがかからない
- 基本的に人力の道具を使うので、子どもでも安全に楽しめる
- 生木は柔らかくて削りやすいので、扱いやすい
という特徴がありますが、私たちはグリーンウッドワークの「生木に触れる」「大型の機械やネジ・釘を使用しない」という点に着目しています。
少し皮を剥ぐと水々しい素肌を見せる「生木に触れる感覚を得られること」や、
伐採してなお、木として材として強くなり続ける「木のエネルギーを感じられる」こと、
そして、自らの手で木を家具に生まれ変わらせるという、「モノづくりの根源的体験ができる」こと。
これらを得られることこそが、グリーンウッドワークの価値ではないかと思っています。
さて前置きが長くなってしまいましたが、今回のゲストは西粟倉村の小学3~5年生の男の子4人です。
今回のワークショップでは刃物を使用するうえに長丁場での作業になります。
そのため、
- 「生木を加工するのに、いかに斧やなた、ナイフを使いこなせるか」
- 「人が使っても壊れないように仕上げられるか」
- 「作ることに集中し続けられるか」
この3つがポイントです!
大人にとっても決して簡単ではない今回のワークショップ。ここからは小学生4人が職人へと変わっていく姿をお伝えしていきます!
まずは森を歩いて心を整える
ワークショップはまず、リファのルーティンでもある「森の散歩」から始まります。
「心を整えずして作品を作ることはしてはいけない。集中力が続きにくくてケガをしやすいからね。逆に作品と向き合う間集中力を持続できれば、より魅力的な作品が生まれるはずなんだ。」と言い、毎日のように裏の森を歩いて体を動かし、心を整え、作品作りに挑んでいます。
この日は、チャレンジングな森の険しい道を歩くことへのワクワク感を持ちながらも、怪我をしないように慎重に自分の身体をコントロールしている子どもたちの姿が印象的でした。
材料を調達していざ作品作りへ!
森を歩き終え、心身の状態が整ったらいよいよ作品作りへ。
今回スツールを作るにあたっては、裏庭に生えていたヒノキを台座として、クリの木を脚として使用します。
(当日は時間がなかったので、ワークショップ前日にリファが裏の森の木を伐採し、材料として使用しました。)
まだ伐採して間もない木は、水分を含んでいてずっしりとした重さがあります。
また、それぞれ同じような見た目でも木には個性があります。子どもたちもその個性を捉えていたようで「どれにしようかなぁ」と悩んでいた姿が印象的でした。
さぁそれぞれお気に入りの形の材料を調達したら、いざ工房へ!
ワークショップに入る前にリファから、
- 怪我をしないためにはどのように道具を使うべきか
- どのように製作すれば頑丈なスツールが作れるのか
実践を交えて説明し、スツールを完成させるまでのイメージを共有します。
「作品をどう仕上げるか、イメージを持っておくことも重要」とリファ。ゲストの子ども達も真剣にリファの実践を見つめていました。
まずは木の皮を剥ぐ
木のスツールを作るワークショップ。まずは木の皮を剥ぐことからスタートです!
木の皮を剥ぐにはナタやナイフを使用します。最初はナイフやナタの使い方を模索していた子ども達。うまく皮を剥げずに苦戦していましたが、だんだんとコツを掴み始めてきます。
木の皮を剥ぐときれいな姿を見せるヒノキ。なかには「ヒノキの匂いがいい匂い!」と木の匂いをかぎ出す子もいました。頭だけでなく五感を使えることも「グリーンウッドワーク」の魅力。モノづくりの最も重要なポイントと言えるかもしれません。
台座に穴を開け、脚を用意する
台座の皮を剥いだら、台座にドリルで穴を開けます。水分を含む生木にドリルで穴を開けるのは危険を伴う作業なので今回はリファが穴あけを担当。その間に子ども達は、好きな高さになるように脚となるクリの木をのこぎりで切っていきます。
Kodamaの裏にあったクリの木は少し濡れていて刃が入りにくそうでしたが、これまたすぐにノコギリの使い方に慣れていく子ども達。それぞれ好みの長さにクリの木をきっていきます。
台座の穴に合うよう、斧・ナタでクリの木を削る
台座に穴が空いたら、その穴に合うようにクリの木を斧・なたで削っていきます。この工程が今回のワークショップで最も難しいところ。
というのも、
- 穴の大きさを把握する
- 脚を穴に合う大きさにするには、どこをどれくらい削るべきか把握する
- 穴にフィットしなければ、なぜフィットしないのか考える
- 穴の中で台座と脚はどう接していて、どう修正が必要なのかを探る
これらの課題をクリアしなければならないからです。
普段使用する機会の少ない斧やナタ。重たい上に危ないし狙ったところに刃が当たらない。
狙いたいポイントに刃が当たってきてはいるものの、なかなか削れない。
作品の完成に向けて大きな試練が立ちふさがります。にもかかわらず子ども達のの目は生き生きとしています。むしろ目の前の木に真剣に向き合う姿がそこにはありました。まさに職人を彷彿とさせる姿。
黙々と木を削っては微調整を繰り返し、さらにまた削り、感触を確かめてはまた削り...
そう繰り返しているうちに、斧やなたの使い方に磨きがかかる子ども達。削りたい箇所をより確実に狙えるようになり、作業スピードが上がっていきます。
今回のワークショップで驚いたのは、子ども達の凄まじい技術の吸収力。どんな作業もあっという間に自分のものにしていきます。
自分でできないところは、リファや周りの大人の力を借りていました子ども達でしたが、最後まで作品を完成させる責任は持ち続けていました。
台座に脚をはめ込んだら完成!
さぁ、台座の穴に合うよう、斧・ナタでクリの木を削れたらほぼ完成。あとは仕上げです。
スツールはただ作って終わりではありません。誰かが座る家具として、あるいは家のインテリアとして末長く生きていくことを踏まえて仕上げを行います。
「家に帰って家族が座っても壊れず安全に使えるように」
「せっかく作ったスツールがずっと壊れることのないように」
慎重に調整を重ね、ついに完成した作品が
こちらです!
個性はデザインである
完成したスツールには、今回のゲストである子ども達の個性がそのままデザインとして反映されている気がします。
丁寧さ、荒々しさ、力強さ、繊細さ…
森を歩いて心を整え、心身が整った状態でモノづくりに向き合い、時に大人の力を借りながらも最後まで責任を持って仕上げきったからこそ、作品から個性を感じられる魅力的なスツールが生まれたのだと思います。
『作り手の個性・心が感じられる作品こそ、本当に価値のあるモノである』と考えています。作り手が責任を持ち最後まで気を抜かず手間をかけて作り上げた作品が、いかに人の心を震わせるか、改めて実感できたワークショップでした。
そして次のモノづくりへ
リファに別れを告げ、完成した作品を大事そうに抱えて帰っていく子ども達の姿がとても印象的でした。
今日作ったスツールをこれからも大切に使い続けて欲しいと思います。そして今回のワークショップの経験が、少しでも子ども達の心に残り、いつか思い出してくれる日がくれば本望です。
リファは、
誰かと話してインスピレーションを受けたり、
誰かと一緒に作品を作ってみたり、
誰かにモノづくりを教えたり、
誰かが知らないことは教えたり、
自分が知らないことは誰かに聞いたり、
と、モノづくりを一人だけで完結させるのではなく、誰かとともにシェアしたいと思っています。
現在いくつかワークショップを用意・企画しておりますが、
メニューにないものでも「こんなものを作ってみたい」「おしゃれなキャンプギアを作りたい」「子どもに一緒にこんな経験がしたい!」
などあれば、ぜひお問い合わせください!
最後までお読みいただきありがとうございました!